2011年12月22日

2011:12:22:12:17:21

スコット・ラファロ〜その生涯と音楽


スコット・ラファロ その生涯と音楽




  今年はジャズ関係の書籍はあまり読まなかったのですが、先日、ドラマーのポール・モチアン
 が亡くなったこともあって読んでみました。ご存知、初期ビル・エヴァンス・トリオで、モチアンと
 組んであの名盤を生み出したアコースティック・ベースの革命者、スコット・ラファロの伝記本で
 す。

  ラファロは25才という若さで事故死してしまったので、実質プロとしての活動期間は非常に
 短いのですが、その音楽活動は、周知のエヴァンスはもとより、オーネット・コールマンやブッ
 カー・リトルなど、当時の新進気鋭らにまで至っており、とても充実して内容の濃いものでした。

  ラファロの絶大な影響力は、現代のジャズ・ベース界にまで至っているわけですが、元々は
 サックス、クラリネット奏者だった彼は、数々の名演を残していた時点では、ベースに転向して
 から7年ほどしか経っていなかったそうですからその早熟ぶりにまず驚いてしまいます。

  この伝記本はファロの実妹のヘレン・ラファロを中心に、生前のラファロと交流のあったミュ
 ージシャンらの証言によって、これまであまり明らかでなかったこの天才ベーシストの素顔が
 描かれています。

  ヘレンの証言からは、近親者ならではの視点で人間〜スコット・ラファロを、ミュージシャン
 らのそれからは、一部コピー譜を引用しながら、不世出の天才ベーシストとしての彼を窺い
 知れるようになっていますね。

  ざっとこの伝記を読んでみてまず思ったのは、やはり早逝したエレクトリック・ベースの革命
 児のジャコ・パストリアスとの共通点。エレクトリックとアコースティクという楽器の違いこそあ
 れ、非常に似ている点が多いということです。

  ラファロは実父が亡くなった際に、自分が25才で亡くなることを予見していたといいますし、
 その自覚が故に、また生まれ変わってその音楽活動の続きをやらねばといったことまで言っ
 ており、まるで生き急ぐかのようにパワフルに生きていたようです。

  ジャコもまた生前、同じように自分の死を予見するような発言をしていたようですし、二人の
 音楽的なアプローチにも、個人的に凄く共通したものがあるように感じました。

  輪廻転生があるのかどうかは分かりませんが、25才という若さでその偉業の中断を余儀
 なくされたラファロが、ジャコ・パストリアスという天才にまた生まれ変わって、エレクトリック・
 ベースという新しい楽器でさらにその仕事を推進したのでは??・・・・そんな風にも思えてき
 ます。

  以前、ジャコの伝記本も読みましたが、全く違う時代に生きた違う人間にもかかわらず、そ
 こに書かかれた内容は、このラファロの伝記本のそれと奇妙なくらい符合する点が多いですね。

  もう、一時期聴くのが嫌になったくらい聴きこんだこの二人の参加しているアルバムを改め
 てこの正月、ジックリ聴いてみようかなと思います。








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posted by sou-un at 12:17 | Comment(2) | TrackBack(0) | オススメのジャズ書籍 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年12月02日

2011:12:02:16:05:03

『Hand on the Torch」/US3

  このアルバムは、当時は物凄くインパクトありましたねぇ。勿論、今聴いても意外と新鮮でカッ
 コいいんですよ。

  ジャズじゃないですけど、英国のラップ・グループ、US3の『Hand on the Torch』というアル
 バムで、特にハービーの名曲「カンタループ・アイランド」のカヴァーは、ラジオでも結構オンエア
 されていて、自分も初めてラジオで聴いてすぐにアルバム買いに走りましたから。「こりゃちょっ
 とカッコイイんでないかい?」と。


ハンド・オン・ザ・トーチ
US3
ハンド・オン・ザ・トーチ
曲名リスト
1. カンタルーブ(フリップ・ファンタジア)
2. アイ・ガット・イット・ゴーイン・オン
3. リズム&ピープル
4. イッツ・ライク・ザット
5. ジャスト・アナザー・ブラザー
6. クルージン
7. アイ・ゴー・トゥ・ワーク
8. SOOKY[↑]2(スーキー・スーキー)
9. ナリッジ・オブ・セルフ
10. レイジー・デイ
11. イレヴン・ロング・イヤーズ
12. メイク・トラックス
13. ザ・ダークサイド

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  何と言っても、先のハービーをはじめ、ホレス・シルバーやルー・ドナルドソンなどのブルー・
 ノート・レーベルの名盤から音源をサンプリングしてきて、その上に自分らのラップを被せて新し
 いヒップホップに仕立てているところが斬新。しかも本家ブルーノートも公認?ということでした
 から、その辺もちょっと驚きで、ブルーノート側も彼らのセンスを認めていたんでしょうね。

 
  もう何十年も昔に録音された音楽ですし、すでに文化遺産的なものになっていたわけですが、
 時代も一巡。当時の若者達はそこに全く新しい”カッコ良さ”を見出して、そのままじゃ何だから
 ということで、そこに彼らのリズムと融合。その流れは今のクラブ・ミュージックまで続いている
 んですから、このアルバムはその先駆け的なものと言ってもいいでしょう。そういえば、ベース
 のロン・カーターがヒップホップ・グループと共演したり、ドナルド・バードやルー・ドナルドソン
 が再注目されたりといったことが最近もあったような。

  こういう音はもう理屈じゃないんで、聴いてみて”どう感じるか”にかかってますね。何となく無
 機質に感じるひともいれば、自然と体が動くひともいることでしょう。まあ、好き嫌いは別れると
 ころだと思います。

  今じゃ手法的には目新しくはないんですが、オリジナルと聴き比べてみるとそれはそれでまた
 面白いですね。サウンドというのはファッションと同じで、ある程度時間を経ると、同じじゃないに
 しろ一巡するのに対し、リズムというものは、あんまり後戻りしないで刻一刻と変化してきている
 のかも・・・そんな風にも思います。

  ところで、「カンタループ」のエンディングで出てくる長尺のトランペット・ソロ。当時、私はこれは
 絶対フレディ・ハバードがゴーストで吹いているんだと思い込んでいた程、音色といい、フレーズ
 といいホントよく似ています、というか似せています。(実際は違うんですけど。)ある意味、ハバ
 ード以上にハバード的というか、今聴いてもなかなかのソロで、ジャズ・トランペット好きは要チ
 ェックかもです。










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2011年11月29日

2011:11:29:18:52:06

『バッラズ・フォー・バスクラリネット』/デヴィッド・マレイ

  今はそうでもないのかもしれませんが、以前はバスクラリネット一本のアルバムというのはと
 ても珍しかったように思います。この楽器をジャズに持ち込んだ先駆者でもある、かのエリック 
 ・ドルフィーもそんな作品は残していなったはず。

  バスクラリネットの魅力といえば、音域によって大きく異なる音の質感じゃないかと私は思っ
 ています。たとえば、高音域はクラリネット特有の華やかで甘い女性的な感じ。中音域はちょ
 うどテナー・サックスのように太く暖か。そして、低音域はこの楽器の最も特徴的なあのエッジ
 の効いたバリバリとした非常に男性的な印象。昔の映画音楽なんかに使われるあの音色で
 すね。

  そんな楽器の特性を生かした、しかもアルバム一枚をゆったりとしたバラードで統一した作
 品をデヴィッド・マレイがずいぶん昔に作っているんですね。そのタイトルも『バラッズ・フォー
 ・バスクラりネット』とそのまんまですが。


バラッズ・フォー・バス・クラリネット
デイヴィッド・マレイ ジョン・ヒックス(p) レイ・ドラモンド(b) アイドリス・ムハマッド(ds)
バラッズ・フォー・バス・クラリネット
曲名リスト
1. ワルツ・トゥ・ヘヴン
2. ニュー・ライフ
3. チャズ
4. ポートレイト・オブ・ア・ブラックウーマン
5. ライオンズ・ストリート
6. エレジー・フォー・ファニー・ルー

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  デヴィッド・マレイは以前は時の人?といった感じで矢継ぎ早にアルバムが出ていた時期が
 あったんですが、この作品もそんな時期に制作された一枚でしょうか。

  マレイは現在はあのソニー・ロリンズのアドバイスもあってテナー・サックス一本で勝負して
 いるとのことですが、当時は持ちかえでバスクラを吹いてました。スタイル的には、先にその
 名を出したドルフィーに近く、ザックリと言えば、正統派のバップにフリーのスタイルをミックス
 した感じ。恐らく本人もこの楽器を吹く時はかなりドルフィーを意識しているでしょう。

  この『バッラズ・フォー・バスクラリネット』は、バラードといってもよく知られたスタンダードで
 はなく、オリジナルが中心。マレイは、様々なテクニック。たとえば、バスクラ特有のコツコツ
 したアタックや先に述べた音質の落差を効果的に用いて、サックスでは表現できない世界を
 演出していますね。

  ただ、マレイの演奏スタイルは時に落ち着きがないというか、饒舌に過ぎるというか、長く聴
 いているとちょっと単調に感じてしまうことがあり、大いに好みが分かれるところでしょう。残念
 ながら本作にもこういったところが顔を出してますね。ジョン・ヒックスのピアノも頑張ってるん
 ですけど、もうちょっと抑えて弾いても良さそうな感じです。

  バスクラ一本でバラード・アルバムを作るというアイディアはとても興味深いものがあるので
 すが、できることならスタンダードも数曲入れた方がよりこの楽器のユニークさが際立ったので
 はと思わないでもないです。まあ、当時の(現在も)マレイの野心的な姿勢を考えると仕方ない
 とは思いますが。








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posted by sou-un at 18:52 | Comment(2) | TrackBack(0) | ザ・廃盤 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月26日

2011:11:26:00:05:12

名ドラマー、ポール・モチアン死去

  ドラマーのポール・モチアンが血液のがん、骨髄異形成症候群のため、NYの病院で亡くなっ
 たそうです。享年80歳。

  ポール・モチアンがその名が本格的に知られるようになったのは、やはり何と言ってもビル・エ
 ヴァンスのトリオによる活動で、特に名ベーシスト、スコット・ラファロの入った歴史的名ライブ盤
 『ワルツ・フォー・デビイ』はあまりにも有名ですね。この強力な初期エヴァンス・トリオ唯一の生
 き残りがモチアンでした。

  今年も新作をリリースしていますし、まだまだ精力的に活動しているものと思っていたので、そ
 んな病魔に冒されているなんて思いもよりませんでした。

  なかなかマネのできない独、特の演奏スタイルをもった素晴しいドラマーであると同時に偉大
 な音楽家でもありました。ご冥福をお祈りします。
posted by sou-un at 00:05 | Comment(0) | TrackBack(0) | 最近のジャズな話題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月24日

2011:11:24:19:17:10

『ストレイト・トゥ・ザ・ハート』/デヴィッド・サンボーン

  このアルバムは本当によく聴いてましたね。しかもかなり長期間にわたって。かなり細かいと
 ころまで頭の中でリプレーできるくらい聴き込んでましたし、今でもこのジャケ写を見ただけで、
 条件反射的にあの冒頭の「ハイダウェイ」のイントロが頭の中で流れてくるほどです。

  
  キッカケは中学の頃、当時アルト・サックスを始めたばかりで、ザ・スクエア命だった先輩か
 ら勧められたのがまだLPレコードだったコレでした。確か私の方からは、何だか忘れてしまい
 ましたが、パーカーのビ・バップのやつを一枚お返ししたような・・・・。

ストレイト・トゥ・ザ・ハート〔ライヴ!〕
デイヴィッド・サンボーン
ストレイト・トゥ・ザ・ハート〔ライヴ!〕
曲名リスト
1. ハイダウェイ
2. ストレイト・トゥ・ザ・ハート - Errol “Crusher” Bennett
3. ラン・フォー・カヴァー - ラルフ・マクドナルド
4. スマイル - C.Perkinson
5. リサ - ラルフ・マクドナルド
6. ラヴ&ハピネス - アル・グリーン, Mabon L.Hodges, ハミッシュ・スチュアート, ラニ・グローヴス
7. ロータス・ブロッサム
8. ワン・ハンドレッド・ウェイズ - Kathy Wakefield, Ben Wright, Tony Coleman

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  とにかく衝撃的でした。当時ジャズに目覚め始めていた私は、その色っぽい音色。どこか洗
 練されていて都会的なサウンド。熱っぽいライブな雰囲気に完全にノックアウトされてしまいま
 した。

  いわゆる正統派の?アルト・サックスとは全く異なるサンボーン特有のメタリックな音色は、
 恐らく日本のポップスの間奏か何かで耳にしていたのでしょう。どこか親しみを感じましたし、 
 その音色でバリバリとソロを吹きまくっているんですからカッコいいことこの上なし。フレーズ 
 もいわゆるジャズっぽさ(バップ色)が希薄で明快でしたし。

  
  徐々にプロデューサーとして頭角を現しつつあったマーカス・ミラーの抜けの良いベースも最
 高で、「ラン・フォー・カヴァー」で聴かれる彼のベース・ソロは、ベース小僧達の憧れの対象に
 なってましたよね。

  
  今やサンボーンも年輪を重ね、ジャズのイディオムを取り入れたりして少し落ち着いた印象
 がありますが、この作品の頃は、勿論ライブということもあるにしろ本当に己の限界に挑戦す
 るかのような激しさがありますね。バラードでも俗に言う”泣きのサンボーン節”がビシビシと
 炸裂です。

  今は亡きハイラムのギターは、聴いていると彼の派手なステージ・アクションまで思い出され
 てきて懐かしい気分になりました。今こうして音だけ聴きていると、今更ですが本当にうまいギ
 ターの弾けるひとでした。早すぎる死が本当に惜しまれますね。

  そうそう、今こうして書いていて思ったのですが、このアルバムを聴いていると彼らのライブ
 の映像が思わず脳裏に浮かんでくるような、ライブに行きたくなるような、そんな感じです。

  サンボーンの作品は、スタジオ収録がほとんどでそのひとつひとつが彼のソロよりも彼の志
 向する音楽そのものに重きが置かれていて非常に粒揃いです。その反面、ちょっと物足らない
 感じもするのは、やはり彼の本質がライブにあるからでしょうか。

  ほんの数小節でも圧倒的な存在感を放てる希有な存在のサンボーンですが、そんな彼のプ
 レーを思う存分堪能できる贅沢。昔は今のようによYOUTUBEなどはありませんでしたから、
 なおさらこのアルバムがありがたく感じたものです。

  近年、サンボーンは、自己のルーツであるR&Bまで遡るような音楽をやっていて、それはそ 
 れで味わいがあっていいのです。しかしながら、私達世代の人間は、やはりこの作品の頃のサ
 ウンドが一番!それは今年の東京ジャズのDMSをラジオで聴いていて改めて実感しました。

  サンボーン〜マーカスという鉄板コラボの原点というだけでなく、デヴィッド・サンボーンという
 プレーヤーの本質を知るにはコレ一枚で十分。個人的にはそう思ってます。









        
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2011年11月23日

2011:11:23:09:41:42

『クリフォード・ブラウン・ウイズ・ストリングス』/クリフォード・ブラウン

  ジャズの”ストリングスもの”の中で特に聖典と崇められているのは、パーカーのそれと今回紹
 介する天才トランペッター、クリフォード・ブラウンの『クリフォード・ブラウン・ウイズ・ストリングス
 』で、今はともかく黒人差別が激しかったその昔、ジャズ・トランペッターの多くは、このアルバム
 を”サクセス・シンボル”のひとつとして精進したと言われています。



クリフォード・ブラウン・ウィズ・ストリングスクリフォード・ブラウン・ウィズ・ストリングス
クリフォード・ブラウン

曲名リスト
1. イエスタデイズ
2. ローラ
3. ホワッツ・ニュー
4. ブルー・ムーン
5. 愛さずにはいられない
6. エンブレイサブル・ユー
7. ウィロー・ウィープ・フォー・ミー
8. メモリーズ・オブ・ユー
9. 煙が目にしみる
10. ジェニーの肖像
11. いつかどこかで
12. スターダスト

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  現代の場合、レコード会社がこれは売れると判断すれば、予算の枠を割いて弦楽セクション
 を入れることはそんなに大そうなことではないのかもしれませんが、それこそパーカーやブラウ
 ンらの時代は、白人社会の象徴たる”弦楽”を黒人音楽のジャズに使うというのはひとつの憧れ
 であり、成功の証だったのかもしれません。

  しかしながら、そういったちょっと悲しくなるような時代背景はそっと横に置いておいて、純粋
 にその音楽に耳を傾けてみると、なるほど名盤と謳われるだけあって素晴しいものがあります
 ね。

  ニール・へフティのペンによるストリングス・アレンジは、やはり時代も時代だけあって、昔の映
 画音楽のそれと同様、甘口の仕上がりなのでそこは好みが別れるところ。しかし、っそれをバッ
 クに堂々と、朗々と奏でられるトランペット・ソロはやっぱり一級品なのです。

  クリフォード・ブラウンといえば、その人柄の良さから”ブラウニー”との愛称で知られ、その音
 色の美しさ、歌心の豊かさ、卓越したテクニックは他のトランペッターの追随を許さず、しかもパ
 ーカー、ロリンズと並ぶ傑出したインプロヴァイザー。

  いわば”アドリブの鬼”のようなブラウンが、切々と美しいバラードを多少のフェイクを加えただ
 けで吹き切るこの作品は、残された数少ない彼の作品群の中でかなり異色ではあります。しか
 し、それでいてムード・トランペット・アルバムなどになっておらず、しっかりとジャズになっている
 ところが、このアルバムがジャズ・トランペッター達のお手本になっている理由のひとつかもしれ
 ませんね。

  確かにブラウンのあの天才的な閃きに満ちたインプロヴァイズという点では、この作品は少し
 もの足りないところもありますが、ブラウンの美点である”歌心”にスポットをあてたものと考えれ
 ば十分に楽しめるでしょう。というか、何も難しいことは考えずにただBGMとしてもかなり上質
 で快適だと思います。

  ノン・ビブラートで間を多用しながらクールに決めるバラード巧者のマイルス・デイヴィスに対
 し、様々なテクニックを用いて、楽曲に華麗な装飾を加えながら明快に歌い上げるブラウン。同
 じ時代を生きたトランペッターでも全く表現の仕方が違っていて面白いですね。








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2011年11月19日

2011:11:19:13:37:27

『ベルリンジャズフェスティバルの日野皓正』/日野皓正

  1965年、世界的にも著名なジャズフェスのひとつベルリン・ジャズ・フェスティバルに出演
 した日野皓正グループのライブ音源。


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 〈曲目リスト〉

 1. バース・オブ・アクション
 2. サイクル・サークル
 3. オード・トゥ・ワークマン
 4. アローン・アローン・アンド・アローン

  その前年にも白木秀夫クインテットで同ジャズフェスに出演、すでに日本国内では人気を
 獲得していた日野さんでしたが、この時点でその視線は”世界”に向けられていたのでしょう
 。なんと人気のピークにあった自己のグループを解体。実弟でドラマーの元彦さんを残して
 大幅なメンバー・チェンジ実践。ピアノを排し、ギターの杉本喜代志さんを加えたニュー・グル
 ープでその檜舞台に立ちました。

  普通ならこんな大舞台に臨むものなら、気心知れた顔触れで行きそうなものですが、あえ
 て新しいグループでリスクを取るところが、今も変わらぬ日野さんらしいところではあります
 ね。

  まあ、現在でこそ日本人が海外のジャズフェスに出演したり活躍したりするのは珍しいこと
 ではありませんが、当時としてはもう画期的な出来事。そのへんは、今の大リーグ事情とよく
 似てますね。イチローさんも凄いけど最初にトライした野茂さんはもっと偉いみたいな。

  実際、この出演時のことがわかりませんが、日野さんの後に出演予定だったあの巨匠、デ
 ューク・エリントンがそれを嫌って、先に自分が出るようプロモーターに直談判。当然、知名度
 という点では遥かに上のエリントン目的のお客さんは、エリントンが終わればソソクサと帰って
 しまう訳で、まあ、エリントンととしては「名も無い東洋人の後なんかに出れるかよ。」といった
 気持ちもあったのでしょうが、こんな”東洋人差別的”な空気が当時は平気にあったという話で
 すね。

  こんなことを多少頭に入れながら音に耳を傾けてみると、なんとなく呼び慣れてなさそうな、
 ギコチナイ感じのMCの後の観客の反応(拍手)は微妙。パラパラといった様子で「名前くらい
 聞いたことあるけど、こいつらどんだけのもんだか?」みたいなムードが伝わってきます。

  しかしながら、演奏が始まると空気が一変!得体の知れない(失礼)東洋人らの怒涛のよ
 うな音はみるみる観客らを圧倒。ステージが進行するに連れて、最初の頃のどこか懐疑的な
 空気は完全に払拭されて驚愕へと。そしてエンディングの日野さん渾身のバラード「アローン
 ・アローン・アンド・アローン」が終了すると同時に惜しみない賞賛の嵐が注がれます。とにも
 かくにも冒頭とエンディングの拍手のギャップが凄過ぎます。コレは。

  そうです!日野さんはこの瞬間、世界への扉を自らの実力でこじ開けたんですね。当時の
 日本はというと、人気のあった日野さんへのやっかみみたいなものもあったのでしょう。日野
 さんの実力を認めないアンチ日野さん的なひともいたようですが、実際に音を聴いて、本物
 であれば、無名有名を問わず一応認めてしまうところは欧米人の美点かもしれません。

  音楽的にはオーネット・コールマンのフリー・フォーム、ジョン・コルトレーンのスピリチュア
 ル。そしてマイルスを少しミックスした感じでしょうか。日野さんの気合いの籠ったトランペット
 は今と変わりませんが、若さもあってフレディ・ハバードばりにバリバリに吹きまくってますし、
 杉本さんのギター・サウンドが実は大きなキーになっているようにも思います。

  今の耳で聴いてもかなり前衛的であり新鮮に響きますから、当時の日本のジャズの凄さ、
 とりわけ日野さんらが世界レベルに到達していたのはまず間違いなく、特に「こんちくっしょ
 〜!」といった反骨精神が更なる”迫力”を引き出したのでしょう。こういうのって現在はちょ
 っと希薄になってきてますかね。

  日本のジャズを語る上で絶対に外せない記録的な一枚。残念ながら現在は廃盤になてい
 ますが、日野さんのアルバムは再発されるものもありますので聴きたい方はそれまで待って
 みるのも一考。勿論、中古ショップで見かけたら買っておきましょう。ヤフオクはレコードは見
 かけるのですがCDはめったに見ませんね。





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posted by sou-un at 13:37 | Comment(0) | TrackBack(0) | ザ・廃盤 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年11月18日

2011:11:18:10:04:57

『ヴォイス』/上原ひろみ

  上原ひろみさんの”ザ・トリオ・プロジェクト”日本ツアーがそろそろ始まりますね。私も久し
 ぶり仙台公演を聴きに行きたかったのですが所用のため今回は行けず。代わりじゃないで
 すが、妻は観に行けるそうです。残念!

  ところで、この『ヴォイス』ですが、ちょうど震災や何やらでゴチャゴチャしていたので、さら
 りと聴いただけでしっかりと聴きこむことはなく、レビューが今頃になった次第。まあ、ツアー
 もこれからですし、まだまだ”新譜”ということで大丈夫でしょう。


ヴォイス
上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト フィーチャリング・ アンソニー・ジャクソン&サイモン・フィリップス
ヴォイス
曲名リスト
1. ヴォイス
2. フラッシュバック
3. ナウ・オア・ネヴァー
4. テンプテーション
5. ラビリンス
6. デザイアー
7. ヘイズ
8. デルージョン
9. ベートーヴェン :ピアノ・ソナタ第8番「悲愴」第2楽章

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  ギター入りの自己のバンド、ソロ、そしてイレギュラーなプロジェクトながらオーケストラと
 の共演と活動の幅を広げてきた上原ひろみさんですが、今作はやっぱり本命ともいうべき
 ピアノ・トリオできましたね。やはりジャズ・ピアノの魅力を堪能するにはトリオが一番だと思
 いますが、この辺は昨年まで一緒にやっていたスタンリー・クラークとの活動の影響もある
 のかな?どうなのでしょう。

  しっかりと耳を傾けていると、あの上原さん特有のテクニカルで都会的な作風はそのまま
 。というよりは、さらに多彩になり”進化”したといった方が的確か。それよりも、ジャズの生
 命線ともいうべき随所で繰り広げられるインプロヴィゼーションの内容が、断然濃厚になっ
 ているというか、前作まで以上に多くののエモーションが凝縮されている感じ。

  そりゃもう、さらにピアノのテクニックが進歩しているのは間違いないんですが、そんなこと
 よりも、以前にも増してひとつひとつの音により多くの彼女のメッセージや感情が乗っかって
 いるようにも思えます。

  メンバーの”人選”も大きいですね。上原さんのテクニカルな楽曲に完璧に対応でき、さら
 に何かを付ける加えることができるベーシストといえば、幅広い音域を完璧にコントロール
 できる6弦ベース、いや”コントラバス・ギター”の名手であるアンソニー・ジャクソンをおいて
 他はないでしょうし、ドラムスも生粋のジャズ・ドラマーよりもサイモン・フィリップスのように
 ジャズもカバーできるロックのドラマーの方が適役ですから確かに最強の布陣ですね。

  しかも彼らはあらゆる経験を積んだ百戦錬磨の達人ですから、上原さんも胸を借りるよう
 な感じで、かなり集中してプレーできたんじゃないでしょうか。彼女の起伏の激しい奔放なピ
 アノを決して彼らが表に出過ぎることなく、しっかりと側面から支えていて”本当に良い仕事
 してるよなあ!”といった感じですし、彼ら自身も上原さんと一緒にプレーできること心から
 楽しんでいるのがその音から伝わってくるようです。

  アルバムの最後にベートーベンのピアノ・ソナタのカヴァーが収録されているんですが、最
 初は正直「どうだかなぁ?」みたいな感じで聴いてました。恐らくそれまでの激しく火照った空
 気をクールダウンさせるためだと思うのですが意外に良いです。コレ。結構気に入ってます(
 笑)。こういった”癒し”の要素も彼女の音楽の魅力のひとつですね。








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2011年11月16日

2011:11:16:17:23:03

『ライブ・イン・ジャパン1961』アート・ブレイキー・ジャズ・メッセンジャーズ

  その昔、日本には”ファンキー・ブーム”という社会現象?が巻き起こり、ウソかホントかわかり
 ませんが、蕎麦屋の出前があの「モーニン」を口笛で吹いていたなんていうくらい、アート・ブレ
 イキー・ジャズメッセンジャーズの音楽がもてはやされた時代がありました。

  実際、1961年の元旦に初来日したジャズ・メッセンジャーズ一行は、初来日時のビートルズ
 とまではいかないまでも、今では到底考えられない程の熱狂的な歓待を受け、彼らの演奏して
 いた音楽はもとより、彼らが身に纏っていたファッションまでもが注目の的だったようです。

  また、そういったことだけではなく、当時の日本の新進気鋭のジャズメン達は、最新の演奏技
 術と知識を持った彼らと交流を果たすことによって大いに刺激を受け、日本のジャズは更なる
 進展を遂げることになるわけですから、日本のジャズ・シーンにとっても彼らの初来日は、非常
 にエポックメイキングな出来事だったといえますね。

  
  今回紹介するのは、まさに、その初来日時のジャズ・メッセンジャーズの東京サンケイホール
 での熱演を記録したライブ音源で、外タレのアルバムとはいえ、日本のジャズ史においてもとり
 わけ大きな意味を持つ1枚と言っても過言ではないでしょう。


LIVE IN JAPAN 1961 ライヴインジャパン1961
ART BLAKEY & THE JAZZ MESSENGERS アート・ブレイキー & ザ・ジャズ・メッセンジャーズ
LIVE IN JAPAN 1961 ライヴインジャパン1961
曲名リスト
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  1961年のジャズ・メッセンジャーズの顔触れといえば、初代の音楽監督的な立場であったサ
 ッスのベニー・ゴルソンはすでに退団。他のメンバーは変わってませんが、後にマイルスの黄金
 クインテットに大抜擢され、更にはジャズ・シーン全体を牽引することになるウェイン・ショーター
 に変わっっていました。

  ウェイン・ショーターといえば、当時のジャズのニュー・ウェイブな手法である”モード手法”を既
 に消化しており、この音源に耳を傾けてみると、当然のことながらグループのサウンドがバリバ
 リのハード・バピッシュなものにややモーダルな新風が吹き込まれているのがわかります。

  たとえば、おなじみの「モーニン」や「ブルース・マーチ」なんかもオリジナルとは風合いが異な
 るものになってますし、「サミット」なんかは当時のメッセンジャーズにとっては新しい試みといっ
 た作品ではないでしょうか。トランペットのリー・モーガンもショーターに啓発されていたのでしょ
 う。少しモダンなムードで吹いてますね。(「モーニン」も「ブルース・マーチ」もアレンジは同じ
 ですが、サックスがショーターに変わっただけでちょっと雰囲気が変わって聴こえます。「イッツ・
 オンリー・ペーパ−・ムーン」や「ブリーズ・アンド・アイ」なんかはショーター風の解釈じゃないで
 すかね。

  まあ、ショーターと本音としては、もっとアヴァンギャルドなこともやりたかったところもあるでし
 ょうが、彼らにとって”ナツメロ”になりつつあった「モーニン」や「ブルース・マーチ」を愛する日
 本のファンのため、またはグループの意向もあったでしょうから、それなりの裁量が加えられて
 いたのは間違いないでしょう。

  これは想像ですが、本場の凄まじいパワーと迫力に圧倒される一方、どこか目新しいサウン
 ドに少しだけ戸惑いのようなものを観客は感じていたのかもしれません。「あれ、ちょっと俺らの
 知ってる”モーニン”と違うな」みたいな。まあ、みんながみんな、彼らの最新アルバムをチェック
 していたとも思えないのでありえる話です。

  まだ黒人差別が横行していたアメリカから初来日した彼らは、これまで経験のない程熱烈な
 歓迎を受け、本国とのあまりにもギャップに戸惑いを覚えつつも、それは一生忘れ得ぬ記憶と
 なったようです。話によると、景気づけに日本酒を舞台袖で煽りながらのステージだったそうで
 すが、そんな熱い声援に精一杯応えようと相当気合いをこめてプレーしていたと思います。 特
 に最後の「チュニジアの夜』なんか、彼らのいろんなライブ・ヴァージョンの中でも最高の部類じ
 ゃないですか。

  その後、親日家のブレイキーは、メンバー・チェンジしながらも何度も来日を果たしていますが
 、あの”ナイアガラ・ロール”と全盛期のモーガンのトランペット・プレーを日本で初めて生で聴け
 たというのは、本当にファン冥利に尽きるというか羨ましいですね。

  ところで、この作品。長らく廃盤になっていましたが(私はLPで所有。)、最近、新たに少し装
 いを変えて復刻したみたいですね。音の方もリマスタリングされたようなので興味のある方はぜ
 ひ聴いてみて下さい。







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2011年11月15日

2011:11:15:20:00:00

『ジャズ・ジャパン』ってどう?

  どうなんでしょう?『ジャズ・ジャパン』誌の評判は?言うまでもなくこの月刊誌の前身はとい
 うと、あのジャズ誌の老舗『スイング・ジャーナル』。


JAZZ JAPAN Vol.15


  後年のSJは、大半が広告なんて悪評がありましたが、確かに『ジャズ・ジャパン』はこの点に
 関しては以前と比べてすっきりしたようですし、いわゆる”有名人”を薄〜く特集や表紙にに絡め
 るなど、何とか購読層を広げるべく努力しているのもわかりますし、読み物も多少良くなってい
 るようないないような。よくわかりません・・・。

  でも、基本的にはあまり変わってないような気がしますね。まあ、昔の良いところは残しつつと
 いったところでしょうが、それじゃあ、結局、結果は一緒のような気がします。キツイ言い方にな
 りますが、買ってまで読む気にならないというか、立ち読みで十分といった感じもします。実際、
 そういうファンの方も多いんじゃないでしょうか。

  創刊当時、電子書籍に力を入れるとか聞いてましたが、あんあり関係ないかもですね。いっそ
 のこと他紙と被っても良いから方向性をガラッと変えても良かったのにと思うのは私だけか。力
 を入れるポイントが完全にズレてるような気がしますね。




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posted by sou-un at 20:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 今月のジャズ関係誌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする