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2009年06月13日

2009:06:13:01:09:19

穐吉敏子&ルー・タバキン・デュオ・コンサート”邪頭梵音”

  2003年に長年率いていた自己のビッグ・バンドを解散し、近年は原
 点であるピアニストとして精力的に活動を続けている穐吉敏子さん。

  昨年は、夫君であり実力派サックス、フルート奏者であるルー・タバ
 キン氏との初デュエット・アルバム『ヴィンテージ』をリリースして、”ピ
 アニスト=穐吉敏子”としての魅力を存分に披露していました。

  今年は、ご夫婦の結婚40周年ということもあって、それを記念する
 チャリティ・コンサートが、6/10(水)に東北福祉大学の『けやきホー
 ル』で行われました。


toshikoakiyoshi.jpg


  結婚40周年という長い歴史を刻まれたご夫婦ですが、実はこうい
 った”デュエット”という形でコンサートを開くことはとても珍しいという
 ことで早速聴きに行ってみることに。

  
  ところが、このコンサート。地元の新聞で一度記事になったくらい
 で宣伝らしい宣伝はほとんどされておらず、私もつい数日前にHM
 Vでこのチラシを見つけて初めて開催を知ったほどです。

  どうやら、主催が会場になっている東北福祉大学と駒澤大学(仏
 教系の私立大学です。)の同窓会ということで、営利目的でなくチャ
 リティ・コンサートということを謳っているために宣伝が不十分という
 こともあったのでしょう。案の定、客の入りは悪く、私は開演ギリギ
 リに会場に入ったのですが、前方の席を除いて半分くらいしか埋ま
 っていなかったのではないでしょうか。(演奏者にもちょっと気の毒
 な感じです。)
  
  しかもお客さんも、ジャズ・ファンというよりは「お付き合いで聴き
 に来ました。」といった趣の方が多いようで、演奏の途中、当然拍
 手で応えるべき熱演にも一切反応らしいものはなく、かといって、
 自分ひとりで大きな拍手を送る勇気もない小心者の私は、こうい
 った場合、本当にに困ってしまうのですね(苦笑)ですから、ジャ
 ズのコンサートというよりは、終始クラッシックのリサイタルのよう
 な静かな雰囲気で、結局アンコールもなかったのはちょっと残念
 に思いました。

  とはいえ、本場アメリカで修羅場をくぐってこられたお二人。これ
 ぐらいのことで動揺することもなく、勿論、プレーに手を抜くような
 ことなどは一切ありませんから、聴きどころは実に多いコンサート
 でしたね。

  途中、休憩を挟んでの2部構成。ファースト・セットは穐吉さんの
 オリジナルを中心に彼女のピアノにスポットを当てたセット。セカン
 ド・セットは夫君のルー・タバキンを大幅にフューチャーしたエリン
 トン・ナンバーなどを主体にしたセットで、どちらかというとセカンド
 の方がよりあの『ヴィンテージ』の世界に近っかたのではないでし
 ょうか。

  もう今更ここで説明するまでもないのですが、穐吉さんのピアノ
 は、彼女がジャズと出会った頃に最も大きな影響を受けたというバ
 ド・パウエル直系の流麗で力強いもので、レディに対して年齢のこ
 とに触れる失礼を承知で言わせて頂くと全くそれを感じさせない溌
 剌としたものですし、次いで言わせてもらえば、ピアノに向かった
 時の姿勢や眼差しが最高にカッコいいんですね。



toshiko-akiyoshi.jpg



  ピアノから離れた時はリラックスしたムードを持っておられる方で
 すが、いざピアノと向き合った時はガラっと雰囲気が一変。ただな
 らぬオーラを発しています。

  3曲目にソロ・ピアノで弾いたパウエルのオリジナル「ウン・ポコ・
 ロコ」では、日本の草分け的ビ・バップ・ピアニストとしての面目躍
 如といった感じの演奏を聴かせてくれましたし、私は穐吉さんのピ
 アノを通じて、もうとっくの昔に亡くなっているパウエルの凄さも改
 めて実感しました。

  また、これも今更言うことでもないのですが、穐吉さんの書く楽
 曲の素晴らしさ。オープニングに彼女の名前を世界で不動のも
 のにした『ロング・イエロー・ロード』が演奏されたのですが、この
 曲だけでなく穐吉さんの書く日本を題材にした曲は、その良い意
 味でバタ臭いピアノ・スタイルとは裏腹に、繊細で実に巧みに「和
 」のテイストが盛りこまれていていいんですよね。穐吉さんの描く
 「和」というのは、日本人が日本に居ながら描くものではなく、彼
 女の人生同様、遠いアメリカという国から一定の距離を置いて見
 た「和」のようにも思えます。
 
  一方、サックス、フルートのルー・タバキンは、技術的にはもう
 超一級といった感じでしょうか。テナー・サックスの方は、コール
 マン・ホーキンス〜ソニー・ロリンズの流れを汲む比較的クラシ
 カルなスタイルなのですが、個人的には彼本来の楽器であるフ
 ルートの方により惹かれました。


Lew_Tabackin.jpg



  フルートの方がテナー・サックスよりもずっと表現領域が広が
 るというか、彼がフルートで音を出した瞬間、その場の空気が変
 わって彼独自の世界が広がるような感じがするんですね。音色
 も本当に多彩ですし、音量も豊か。スタイル的にはエリック・ドル
 フィーやローランド・カークを思い起こさせるものがあります。

  ただ、ルーの場合、見た目は非常に紳士的で、一見どこかの
 大学教授風なんですが、そんな外見に反してプレー自体は非
 常にパワフル。テクニックとパワーで圧倒するような傾向があ
 って、少々オーバー・ブロー気味になっているのが気にはなり
 ましたね。

  まあ、これが持ち味と言えば持ち味かもしれませんし、たまた
 まこの日がそういう傾向が強かったのかもしれませんが、(レコ
 ーディングではそれほどでもないのですが。)テクニックがあり
 過ぎるが故に、表現したいことがよく伝わっていないような印象
 を持ちました。まあ、これはルーのようなテクニシャンの場合、
 宿命のようなものかもしれませんが。



  そして、今回のコンサートで私が一番注目していたのが、彼ら
 の結婚40周年記念だからということではないんですが、二人の
 間の音楽的な空気感。
  
  ご夫妻はジャズ界でも有名な“おしどり夫婦”としても知られ
 れていますが、今回の「デュエット」はもう、「さすが40周年とい
 うだけあって息もぴったりです。」なんて安易な表現は使いたく
 ないような、そんなステージでした。

  結婚生活はある程度年数を重ねると、お互いが”空気”のよう
 な存在になるなんて笑い話がありますが、お二人のデュエット
 を聴いていると、丁度そんな感じなんですね。

  要所要所はやっぱり穐吉さんが締めているような感じなんで 
 すが、どちらかというとマイ・ペースで吹くルーに、しっかり穐吉
 さんが合わせていたり、時折、それが反対になったり・・・・とそ
 ういった”押し引き”がやはり絶妙なんです(笑)

  ある時はそれがチグハグだったり、またある時はピッタリとよ
 り沿うような感じになったり、またある瞬間はバラバラになりそ
 うなのを二人の呼吸で一瞬で元の位置に引き戻したり、また、
 それがうまくいかなかったりと、よく聴いていると本当に山あり
 谷ありで、結婚生活そのものを音楽で表現しているように感じ
 られて、まさに「夫婦デュエット」の醍醐味を堪能しました。


  ところで、会場になった『けやきホール』。どちらかというとクラ
 シック音楽向けのホールのようで、音響が素晴らし過ぎるという
 か残響が強すぎました。サックスやフルートはそれなりに良い
 感じなのですが、ピアノに関しては、それがちょっとマイナスに
 作用してしまった感は否めませんね。速いパッセージなどは我
 々客席側の方からは本当に聴きとりにくかったですから、演奏
 者側はもっと大変だったのではないでしょうか?リズムがいな
 い、こういった「デュエット」という形の場合はなおさらで、スイン
 ギーな曲などはかなり影響が出ていたように思います。

  勿論、時間が経過するにつれて、お二人もうまく対応されて
 いて、聴いているこちらも段々慣れてきたのですが、もっと小
 さな箱で聴いてみたかったというのが正直なところですね。  
 








ばな1.gif







この記事へのコメント
初めまして。
いつも興味深く拝見させております。
落語イベントがあります。
7/13 19:00〜 THE GRAND HALL(品川)
橘家蔵之助&谷川賢作(ピアノ)のコラボレートライブです。お囃子:太田その、前座・春風亭ぽっぽ。
ピアノと落語の競演です。
よろしければお運びください。
詳細はhttp://off-broadway-japan.com/にございます。
Posted by 麻生 at 2009年06月15日 11:36
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