前回の『他の楽器も達者なジャズ・メン達@』に引き続き、今回は
その第2弾を送りしたいと思います。
さて、このシリーズ。どちらかというと余興的というか変化球的な企
画でもありますから興味のない方はサラっと読み飛ばして頂いて全
然構いません(笑)
ということで、今回は自分の専門外のピアノも上手いジャズ・メン
達を中心にまとめてみました。
■テナーの巨匠、ベン・ウェブスターはピアノも上手い!
ハスキーなトーンとセクシーなプレーが魅力のテナー・サックスの
巨匠、ベン・ウェブスター。
彼はジャズ・テナーサックスの大変なスタイリストですが、ピアノの
腕前も一級品です。
オスカー・ピーターソン・トリオと共演した彼の代表作、『ソウル・ヴ
ィル』というアルバムに後年追加された3曲のボーナス・トラックで彼
の快活なピアノを聴くことができます。
スイング時代のひとなのでプレー・スタイルは昔風のストライド奏
法が基本ですが、その達者なプレーぶりは、決して付け焼刃なもの
ではありません。
■実力未知数?マイルス・デイビスのピアノ。
ディジー・ガレスピーにピアノを勉強するよう強く勧められたマイル
ス・デイビス。
70年代のエレクトリック時代から、バンドのサウンドをコントロール
するツールとして、オルガンやシンセをステージ上で多用していたの
で、音源的には結構いろんなところで聴くことが可能です。
マイルスの場合、上手いとか下手とかはある意味超越していて、そ
の音使いは極めてユニーク。常任の理解が及ぶところではありませ
ん。
アコースティック時代に有名なところとしては、”モード手法”が試
験的に導入された名作、『マイルストーン』の中の「シッズ・アへッド」
という曲で、コルトレーンやキャノンボールのソロのバックで真面目
に(笑)ピアノ伴奏を付けるマイルスを聴くことができます。
録音中にマイルスとレッド・ガーランドが口論になって、ガーランド
が出て行ってしまったとか、ガーランドが遅刻したとか諸説があるよ
うですが、とにかくその場にガーランドが不在で、しかたなくマイルス
が伴奏を付けることになったとのこと。
コンピング(相の手)が明らかにプロ・のピアニストのものとは違い
ますが、分厚い、武骨な感じのコードが独特なムードを醸しています。
まあ、決して上手いとは思わないですが、何しろマイルスですから
こういうのもアリでしょう(笑)
でも、ピアノ・レスで吹くマイルスが一番ノビノビして良いソロを取っ
っているような気もするんですが・・・。
■ヴァイブの名手、ミルト・ジャクソンの無難な感じのピアノ。
ヴァイブラフォンの名手、ミルト・ジャクソンは、元々ピアノを勉強
していたとだけあってとても上手いですね。
彼のピアノは、色々なアルバムで耳にすることができると思いま
すが、例えば、クリフォード・ブラウンに多大な影響を与えたという
トランペット奏者のファッツ・ナヴァロのブルーノート盤にも彼のピア
ノを数曲ですが聴くことが可能です。
一聴した感じでは、本職のバップ・ピアニストにしか聴こえないほ
ど流麗なものですが、これこそセッションの成り行き上弾きましたと
いった感じのものでそれ以上でもそれ以下でもない無難な出来栄
えですね。(それだけミルトと言えば、ヴァイブのイメージが定着し
ているとも言えますが。)
やはりこのアルバムに関しては、輝かしいファッツ・ナヴァロのト
ランペットを聴くべきでしょう。
■ピアニスト、チャールズ・ミンガス。
偉大なジャズ・ベーシストであり、作編曲家でもあるチャルーズ
・ミンガス。
ベーシストというのは、その音楽的なポジションからピアノが上
手いひとが多いのですが、ミンガスも優秀なピアニストのひとりで、
彼の場合、ソロ・ピアノ・アルバムをリリースしている程ですから、そ
の腕前はかなり本格的なものですね。
『ミンガス・プレイズ・ピアノ』というアルバムは、彼のオリジナル曲
とスタンダードを淡々とソロ・ピアノで演奏した作品で、そこで聴かれ
る彼のピアノは、ビ・バップ的というよりはそれ以前のスイング・ジャ
ズ風、彼の憧れであるデューク・エリントンに通じる味わいがありま
すね。
地味な作品ですが、ミンガスという「音楽家」をトータルで捉える上
で、とても興味深い作品だと個人的には思っています。
■ジェリー・マリガンのメローなピアノ。
クール・ジャズの旗手でありバリトン・サックス奏者のジェリー・マ
リガンは、作編曲でも非凡な才能を発揮しました。
彼の人気作である『ナイト・ライツ』のタイトル曲では、珍しい彼自
身が弾くピアノを聴くことができます。
アドリブはなく、ただ主旋律を弾いているだけなのですが、透明感
溢れる美しいタッチが非常に心地よく、彼がピアニストとしても非凡
なものを持っていたことがわかります。
また、『カルフォニア・コンサーツ VOL1』というライブ盤では、自
作のブルースをピアノで演奏するマリガンを聴くことができますが、
こちらの方は『ナイト・ライツ』とは雰囲気が一転、かなり硬質でゴツ
い感じのタッチです。
■トロンボーンも吹けるピアニスト?ボブ・ブルックマイヤー。
”ヴァルブ・トロンボーン”という、あまり聞き慣れない楽器の第一人
者であるボブ・ブルックマイヤーは、ピアノも弾けるというよりは、”ト
ロンボーンも吹けるピアニスト”と言ってもいいくらいの卓越した技量
の持ち主。
何と驚くことに、あのビル・エヴァンスと連弾して、しかも互角に渡
り合ったという『アイヴォリー・ハンターズ』というアルバムを発表し
ているくらいですからその実力は本物です。
勿論、トータルではエヴァンスに軍配が上がりますが、ブルックマ
イヤーのピアノはかなりエヴァンスに肉薄していて、彼がトロンボー
ン奏者であることをしばし忘れてしまうほどです。
■実は凄腕ピアニスト。ジャック・ディジョネット。
コンテンポラリー・ジャズ・ドラムの巨匠、ジャック・ディジョネットは、
元々プロのピアニストだっただけに、キーボードの類まで含めて鍵盤
楽器に関して並々ならぬこだわりがあるアーティストです。
以前ある音楽雑誌で、彼が自宅用にヨーロッパの零細工房からわ
ざわざ特注のピアノを取り寄せているといったインタビュー記事を読
んだことがあるのですが、そこからも彼のピアノに対する愛情が窺え
ますね。
ディジョネットは自分名義のアルバムでは、自分でキーボードを弾
いていることも多いのですが、随分前には彼自らピアノを担当したピ
アノ・トリオ・アルバムをリリースしていたことがあります。
ディジョネットは、キース・ジャレットのスタンダーズ・トリオのレギュ
ラー・ドラマーを長年務めていますが、それはやはり彼がピアニスト
の資質を持つが故に、ピアニスト(キース)の心情が一番理解できる
からなのでしょうか。
ということで、今回はこの辺で。次回はもうちょっと時代を近年まで
進めて、ピアノだけでなくヴォーカルや他の楽器についても取り上げ
てみたいと思っています。

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